2013年3月10日日曜日

先生と呼ばれた日々

ほんの短い間だけれど、
私は「先生」と呼ばれたことがある。

大学時代、田舎の高校に
教育実習に行ったときのことだ。

受け持ったのは、高校1年生。
当時の私は外見も、
中身も 大学生にしては幼稚だったと思う。
彼らと、それほど変わらなかった。

「東京から来た大学生」に
女の子たちは、興味津々だった。
「先生、ディズニーランド行ったことある?」
「芸能人に、会ったこともある?」
毎日、休み時間にはまとわりついてきて
私は生まれて初めて、大変な人気者になった。

「先生もいいかなぁ」なんて、ちょっと思ったりした。

クラスに、とっても可愛い女の子がいた。
ちょっぴり、背伸びして 突っ張ってるな…という感じだったけど
媚びていないところが、いいなと思った。
私は彼女が好きだった。

ある日、彼女は「態度が悪い」という理由で
担任の先生につよく叩かれた。
みんなの前で。

私は、ひどくショックだった。
「叩かなくたって、いいじゃん!」と心で叫んだ。
でも、何も言えなかった。

せめて、「私は味方だよ」と伝えたくて
じっと彼女の方を見たけれど
彼女はじっとうつむいていて、
ただ恥ずかしさと、悔しさに耐えていた。

その後、声をかけようと思ったけれど
ふたりきりになれるチャンスはなく、
別れの日が来た。

とうとう最後まで、彼女には何も言えなかった。
ただ、肩に手を置くだけでもよかったのに。

生徒たちにプレゼントされた
大きなぬいぐるみを抱いて
私は学校を後にした。

やっぱり、私は先生にはなれないなぁ。
そう思った。

あのときの彼女に、伝えてあげたかった。
学校って、辛いところだよね。
でも、この先に
まだまだ人生はつながってるんだよ!

彼女はどうしているかな?
きっと、素敵な人生を送っていることでしょう。

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