2014年5月25日日曜日

その人と私は

その人と私は、
ある会で隣同士に座りました。

私と同じくらいの年齢ですが、
もう成人した息子がいると
話してくれました。

「息子は、知的障害があって
仕事には就けないので
施設に通っています。

毎日、送り迎えが必要です。
公共の場所でも、大声を出したり
動きをやめられなかったりするので
私が常に付き添っていないといけないんです。

ふつうは、子どもが成長するに従って
子育てってラクになるものでしょう?
でもうちは反対なの。
子どもが大きくなるほど
力がつよくなるから、抑えるのが大変で。

ふたりだけで家にいるときに
暴れられると、身の危険を感じることも
あるんですよ。

あまりにも興奮して抑えられないときは
トイレに避難することもあります。

でも、私の子育ては特殊だったから
みなさんみたいに、ほかのいろんなことで
悩む暇もなかったですね。
みなさん、本当にいろんなことで悩んでいるでしょう?

つらいこと?
そうですねぇ…。

あの子が幼稚園のときだったかな、
運動会の日も、興奮して走り回っているから
私は必死で後を追っかけなきゃいけなくて。
そんなとき、
輪になっておしゃべりしているママたちを見て
「ああ、いいなぁ」って
そう思ったのは覚えていますね。

あなたはどんな仕事をしているんですか?
本の編集? 以前は出版社に勤めていたの?
すごいわね、バリバリ働いて」

そして彼女は、
にっこり笑ってこう言いました。

「私が生きられなかった、もうひとつの人生」

私は涙を抑えるのに精一杯でした。

彼女がほかのママより不幸?
息子のために犠牲になった?
そんなふうに思うのは、浅はかです。

彼女はただ、ずーっと
息子さんのそばにいたのです。
ひとりにすることなく。

私たちの知らない幸せを、
彼女は知っているはずです。

高校生の息子のお弁当。
自分のモチベーションを上げるために、
毎日写真を撮っています。
今日のメインおかずは、イカフライ!

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